感情がないと言った先輩のこと
あれこれ考えて悩んでたら眠れなくなってしまったので、ブログを更新することにした。
※一応、オブラートに包んでいるのと、一部内容変えて表現してますが、グロい表現があるので苦手な人は見ない方がいいです。
またしても自分の機嫌をとることに少し関連するので、先日の閉鎖した元職場(コールセンター)の後に就職した会社で出会った先輩のことを書きたいと思う。(かなり前に一度聞いただけなので、うろ覚えな部分もあるけど)
その先輩は私より少し年上の方で、既に結婚されて娘さんが3人いて子煩悩なだけでなく、営業成績もそこそこ良くて、会社から表彰もされて、私をはじめとする後輩や同僚など周りの面倒見もよく、いつもニコニコして、さわやかなタイプの、いわゆる陽キャラっぽい感じの方でした。
成績が悪かった私は、一緒に同行してもらったり、ロープレしてもらったりと、かなりお世話になり、同時に迷惑もかけたりと、頭の上がらない先輩のお一人。(同じくお世話になった人は何人もいる)
前職の上司が常に不機嫌な態度をされている方だったので、いつもニコニコして変わらない普段の雰囲気から、昔から明るくて悩みもあんまりないんじゃないか、苦労とはほぼ無縁に生きてきたんじゃないかと勝手にイメージするくらいに見えていたのですが、(皮肉ではなく、そういう負の部分を本当に全く感じないし、そういう話しも聞かない人だったので)あるとき、たまたま先輩の身の上話を聞く機会がありました。
話の流れは忘れましたが、多分先輩に愚痴を言っていたときに、先輩が「自分には感情がない」と言いました。
最初、何のことかさっぱり意味が分からず「どういう意味ですか?」と聞き返すと、「自分には、怒ったりとか悲しいとか、ムカつくとか、楽しいとかみたいな感情がない」と言う。だから、私が何かに怒ったり、ヘコんで落ち込んだりしているのは、普通によくあることだし気にする必要はないし、ある意味羨ましい。と言うのだ。
そんな人に会った事もなかった私は、そんな人が本当にいるのかと、驚きと、信じられない気持ちと、ほんの少しだけ先輩ならありえると納得している自分がいた。
その先輩が怒っているのを、一度も見たことがなかった。
見たこともなければ、聞いたこともなかった。(大事な事なので2回)
そんなの当たり前じゃんと思うかもしれないが、その先輩はイライラしていることも、嫉妬することもなかったし、悪口も愚痴も全く言わない、どれか好きとか、なにが面白いとかも話さない人だった(というより全く記憶にない)。かといって、引っ込み事案なタイプでも全くなく、みんなが嫌がることをそそくさとやるし、いろんな人に気兼ねなく声をかけるし、コミュニケーション能力はかなり高かった。
誰かに何か言われても、どんなに理不尽なお客さんにあたられても、何もなかったように対応する。先輩の周りだけ凪いでいる空間ができあがっているみたいな、そんな感じの人だった。
昔からそうなんですか(感情がないんですか)って聞いたら、多分きっかけになったと思うことならある。って言って、簡単に身の上話をしてくれた。
聞くと、その先輩には父親が5人いて、その5人の誰が本当の父親か分からないという話しだった。
お姉さんが一人いて、そのお姉さんとも血のつながりがあるか分からない。ただ、父親と呼ばれる5人の男性は同時に一緒にいたわけではなく、離婚や再婚、あるいは同居というかたちで、その人たちの中でぐるぐるして暮らしていたということだった。
そのぐるぐるするに至る理由も様々で、DVを中心に、蒸発、浮気といろいろあったらしく、一度、DVがひどくて別れたはずなのにまた一緒に暮らすことになった人もいたらしい。
そして、その中の1人、もしかしたら血の繋がった父親の可能性が高い男性がいて、その人と母親、姉、自分と、4人でまた暮らし始めていたそうだが、その人はDVがひどかったそうだ。
ある日の夜、先輩が物音で目を覚ましたとき、現父親のその男性が酔っ払った状態であれこれ喚いていて、先輩は殴られるかもしれないのでこっちに来ないように、と願いながら寝たふりをしてその男性の様子を伺っていた。
気がつくと、部屋の入口で母親が何とも言えない表情で立っていたそうで、先輩はどうしたんだろうと思っていたら、よく見ると母親の手に包丁が握られていて、気がついた時には、母親が背中からその男性を刺したのを、まるでスローモーションを見ていたかのようにハッキリと見たそうだ。
その後の詳しいことは省くが、その男性がどうなったかわからないまま、先輩とお姉さんはバラバラに保護され、なんとか生きてきたそうだ。
その生きていく過程で、自分に感情がないということに気がついたとのことだった。
あの現場を目撃したのが最初のキッカケだったのか、その前から感情がなかったのかは記憶が曖昧らしいが、ターニングポイントになったのは間違いないとの事だった。
それ以来、嬉しいとか、悲しいとか、腹が立つみたいな感情がわかず、でもとりあえず普通っぽいよくある反応をしないと相手が不審がったり、嫌がったりするので、こういうことを言われたり、されたりしたときはこういう反応や言葉を言えば、相手が納得したり、喜ぶんだなってのを小さい頃から学習して今に至るとのことだった。
だから、心の底から泣いたこともなく、人が死んで寂しいな、可愛そうだなと表面上にちかいところで少し思う事はあっても、悲しくて悲しくて仕方がないとなった事もないし、なんでアイツばかり贔屓されるんだとか嫉妬したこともない。周りの反応を見てマネをしたり、相手の好きそうな反応をしているだけで、愛想もあった方が生きやすい(生活しやすい)から、そういう反応をして生きている。
そう話したあと「多分、このあと帰り道でアンタが死んだとしても泣かないと思うよ。」ってサラッと言われて、いろいろ衝撃過ぎて、自分がそのとき何を言ったのか、何も言わなかったのかも、全く覚えていない。ショックだったのか、悲しかったのかもよく思い出せない。
そして先輩は、その感情がないせいなのか分からないけど、趣味もない。と言った。何にも興味が沸かないし、何をやっても心から楽しいと思った事がないそうだ。楽しんだろうなーとイメージすることはできるとのことだが、とりあえずやってみただけで終わるとのことだ。
仕事もやりたいからやっている訳ではなく、取りあえず家族を養う必要があるから、やっているけど、この仕事じゃなくてもいいと思っている。そこそこ成績を取っていれば(営業なので)とりあえず給料は悪くないから効率で選んでいるけど、昇進したいわけでも、この仕事でこうなりたいみたいな夢もない。昔から、死に対する恐怖もなかったので、いつ死んでもいいかな(いいというより、そうなったらそれが運命くらいのすんなり受け入れる間隔)と思っていたそうだ。
死に対する考え方については少しだけ理解できたけれど、「感情がない」部分に対して、なんて言えばいいのか分からなかったし、同時に、だからこの人は周りの強い感情に流されないのかと、納得もした。あえて意図的に合わせることはしても、流されることのない理由が分かり、この人は最強だなとも思った。それが幸せなことなのかどうかは分からないけど。
その後も、何かとお世話になっていたが、いつも誰の感情や行動に振り回されないし、周りがどうすれば居心地が良いのか、そのために自分がどういうスタンスでいれば良いのかをよく理解されて実行していた。羨ましくてマネしてみたこともあったけれど、全くもって無理だった。自分が思っている以上に自分はわがままだったし、気がつくと自分本位なことばかりで、感情をなくすのはとても無理だった。
私がその仕事を辞めるとき、その先輩に連絡したら「あっそう、次の仕事頑張ってね」で終わった。「あんだけ面倒見てあげたのに!」とか「なんで辞めるの!?」とか「寂しい」みないな言葉は一切無かった。分かってたけど、ほんとあっさりだった。
同時に、感謝の気持ちを伝えたり、お世話になったお礼で何を差し上げるかがものすごく困った。「感謝とか面倒見てもらって申し訳ないとか、そういうの別にいらないし思わなくてもいいよ」とか「欲しい物ない。マジで。」とか言われて、せめて喜びそうな物あげたいと思うのにそれが全然ないってほんとしんどかった。(もしかしたら後輩だからってあえて遠慮してくれていたのかもしれないけど)
ドライかもしれないけれど、後腐れが全くないのはすごいとも思った。私は自分の感情にも、人の感情にも流されやすいので、流されてるときや自分の感情をコントロール出来ないときは先輩の「感情がない」部分はいまでも羨ましく思う。
最後に、その先輩が本当に全くもって「感情がない」かっていうと、唯一例外で感情が沸くと言っていたのが、娘さん達だった。娘さん達に対する愛情は本当だと分かる。とご本人もはっきり言っていたし、最初のお嬢様が生まれたとき、心の底から嬉しくて、恐らく物心がついてから初めて本気で泣いたそうだ。
子供ってすごいなぁ。
0コメント